すでに2023年もあと約3か月となってしまいました。あの騒然としたコロナ禍から 米国はかなり落ち着いてきましたが、相変わらず物価高は続き、また、車の部品や車そのものを盗むようなカージャック他の犯罪や、車のスピードや赤信号無視などによる交通事故の多発などを 見聞きをすることが多くなってきました。
そんな中で、たまたま戦後の防犯雑誌を目にしましたので、今回は、その防犯雑誌と、関連して当時の日本の警察についての写真を紹介したいと思います。
下記は、1948年9月に第1巻2号の防犯雑誌、蜘蛛(1948年7月創刊) というものです。発行所は、警視庁刑事部内の東京部防犯協会連合会となっています。表紙が、美しい女性の顔であり、その背後に蜘蛛の巣が張っているという絵になっていますが、表紙をめくると、表紙のイメージと異なり、いろいろな活動をする、「海上Gメンの先駆、東京水上警察」の写真や、「愛情の花ひらく」として女性警察官の写真があり、そのあとは、「世の母に訴う:青少年の犯罪をいかに防ぐか」というテーマでの座談会の記事が続きます。
Above all: Bohan Zasshi Kumo. RG331UD1136 Box 302 RG331, Records of Allied Operational and Occupation Headquarters, World War II, Entry UD1136, Box 302.
この座談会は、警察関係者だけではなく、法律、教育、政治の分野からの専門家や評論家によるもので、青少年の犯罪は、家庭教育の欠如、営利目的だけに出版された有害な出版物、政治の貧困、そしてインフレにおる経済会の混乱などの問題から起きているとしていました。そうしたことも確かにあったと思いますが、あの戦争で、両親を失い、孤児や浮浪児となった子ども達や若者達も多かったし、頼るべき人間がいなかった状況で、生き延びていくために何でもしなければならなかったという追い込まれた現実も非常に厳しかったのではないかとも思いました。
中身は楽しいというものではないので、表紙を魅力的またはミステリアスな雰囲気にして、多くの人々に手にとって読んでもらいたいといった出版する側の意図があったのかもしれないと思いました。当時はまだテレビや電話もありませんでしたので、こうした雑誌は、新聞、ニュース映画や、本や漫画などとともに、情報を提供する手段としても、非常に重要であったと思います。
たまたまこの雑誌を目にしたことをきっかけに、当時の警察官についての写真も調べたくなりました。都心の交通整理はもちろん、いろいろな犯罪者の逮捕や取り調べ、闇市の調査、いろいろなデモ活動の監視や暴力的行為への取り締まり、拳銃の取り扱い他のトレーニングなど、多岐にわたる写真がありました。ここですべてを紹介することはできませんが、それでもそれらの写真から当時の世相を垣間見ることができると思います。
上記の4枚の写真は、東京の写真です。交通事故を最小限に抑え、交通がスムーズになるように日本の警察官と占領軍の陸軍憲兵(MP: Military Police)が協力して活動をしました。興味深いのは、米軍が車を使い、日本の人々は、トラック他の車を使う人々もいましたが、それよりも自転車や牛にひかせたリヤカーも使っていて、彼らも同じ道路を使っていたということです。また当時はガソリンが十分でなかったので、石炭を燃やして車を動かしていましたが、時々ガスを溜めるためにしばらく止まらなければならず、それは時々深刻な交通渋滞を招くことになりました。
Above left: Tokyo Traffic Project. Traffic violations in Tokyo, Japan, bring the wrath of Japanese policemen on native drivers. Military Police and these Japanese police work together to keep traffic flowing smoothly with a minimum of accidents. 7/23/1947. Photo No. 296379.
Above right: Tokyo Traffic Project. A-wired conglomeration of Japanese owned vehicles wait at the Imperial Plaza in Tokyo, Japan for traffic lights to change. Most of the traffic signals in Tokyo are inadequate or out of order. 7/23/1947. Photo No. 296377.
Bottom left: Tokyo Traffic Project. In no city on earth is the ox cart and bicycle cart put to such extensive use as in Tokyo, Japan. These cumbersome vehicles are shown on the Imperial Plaza in Tokyo. 7/23/1947. Photo No. 296378.
Bottom right: Tokyo Traffic Project. Because of the shortage of gasoline, charcoal gas must be used as a substitute. These charcoal driven vehicles often must stop to build up pressure and sometimes cause serious traffic jams. No. 296381. 7/23/1947.
All above from Box 583, RG111SC (Records of Signal Corps WWII and After photographs), National Archives in College Park, MD.
各地域の警察署にも、日本の警察官とともに陸軍憲兵もいたことがわかります。またそうした警察署に補導された子ども達の姿も見えます。そうした補導された、または逮捕された人々のために、食事を作って運ぶレストランで働く人の姿もありました。
Above left: Front entrance to Marunouchi Police Station, Tokyo City, 10/2/1946. Photo No. 281034.
Above right: Juveniles in detention at the Tokyo Water Police Station, Tokyo, Japan. 10/2/1946. Photo No. 281033.
Bottom: Interior of kitchen of private restaurant catering to prisoners at the Sakamoto police Sation, Tokyo City. 10/4/1946. Photo No. 281044.
All above from Box 538, RG111SC (Records of Signal Corps WWII and After photographs), National Archives in College Park, MD.
戦後の女性警察官は、上記の防犯雑誌の記事にあるように、女性の細やかさや愛情、母性といったものがかなり強調されていたかと思います。が、それでも女性が公務員として警察の仕事を担うことは、女性の活躍の第1歩としても非常に大事なことであったと思います。下記は、東京裁判で戦争犯罪人とされた人々を訪れる家族や関係者の荷物検査や赤ちゃんを一時的に預かってあやしている様子です。
Left: Japanese policewomen at War Crime Trials. Japanese policewomen search visiting spectators at the International War Crimes trials of the 27 accused Japanese war Criminals at the War Ministry Bldg., Tokyo, Japan. This is the first time in the history of Japan. That women have been trained for police work. 11/20/1945. Photo No. 283343. Box 546.
Right: International War Crimes Trials in Tokyo. At the War Ministry Building in Tokyo, Japan. A Japanese policewoman takes care of a baby while its mother is visiting the War Crimes trials of the 25 alleged major Japanese war criminals, International Military Tribunal for the Far East. 6/19/1947. Photo. 288097.
Box 563.
Both from RG111SC (Records of Signal Corps WWII and After photographs), National Archives in College Park, MD.
戦後は、食料難や物資の不足から、メーデー他いろいろなデモが行われました。そうしたデモにおいても警察は出動しました。
Above left: May Day demonstrations in the heart of Tokyo break into frenzied riots as communist inspired agitators prepare to break through police lines at the northeast corner of Hibiya Park. The Violence commenced only one block from HQ, FEC. 5/1/1952. Photo No. 399390.
Above right: Tokyo Metropolitan police from a cordon in downtown Tokyo, Japan, to battle communists during a “May Day” demonstration. 5/1/1952. Photo No. 399387.
Both from Box 851, RG111SC (Records of Signal Corps WWII and After photographs), National Archives in College Park, MD.
下記の写真は、占領軍の警察官と日本人警察官がパトロールをしているときの様子と、白バイに乗った日本人警察官達の様子です。占領期には、こうしたコラボが常にあったことをあらためて知るのはとても興味深いと思いました。 また当時の警察官の乗り物は、私が子供だったころも見たような記憶があるので、なんとも懐かしいと思いました。
Above left: CPL John Lyttle (New York, NY) (Center) and Japanese policeman, Sato Tadachi, OR Patrol, look on as A/1C Dan Rick (Belle Center, Ohio) introduces identification papers from his billfold. 3/29/1954. Photo No. 457120. Box 985.
Above right: (L to R) Patrolmen, Hirotsu, Hayashida, and Morita, demonstrate the type of motorcycles used by the Tokyo Metropolitan Police Bureau in Tokyo, Japan. 12/11/1953. Box 978.
Both from RG111SC (Records of Signal Corps WWII and After photographs), National Archives in College Park, MD.
今回はたまたま、戦後の防犯雑誌を目にしたところから、警察に関する写真資料も少し追うことになりました。戦後の占領期の警察関係の写真はまだたくさんあります。戦後の占領軍による民主化政策の中で、それまでの治安維持法や、特高なども廃止されて、新たな日本の警察制度が整備されていきました。そうした政策を進めていく上で、日本の警察の協力は不可欠なものであったと思います。なので、当時の警察制度の仕組みやその後の変遷についてももっと学んでいきたいと思っています。(YNM)