メリーランド州のカッレジパークにある米国国立公文書館(以下NARA)の3階には、地図・設計図閲覧室(Cartographic and Architectural Research Room)があります。ここには、第二次世界大戦中に米軍が日本上空で撮影した空中写真や主要な地図も含まれています。
今回は、3階閲覧室内で撮影許可された箇所とほんの一部ですが資料のご紹介をします。
3階閲覧室は、大きな地図や資料を扱う為、テーブルは比較的広々としています。
左下は、NARAに設置されている専用の電光板です。この専用機材を使って空中写真のネガフィルムを閲覧します。サイズは9x9が基本ですが、右下のように9×18インチの大きなサイズのものもあります。
ネガフィルムは左下の様な缶に入ってカンザス州レネックサにある保管庫から送られてくるため、それらを請求してから閲覧できるまでに数日から1週間かかかります。右下は、スキャンニング用スキャナーですが、ロールになっているネガフィルムをスキャンするために、特殊な加工がされています。こちらもNARA常設機材です。
下の写真資料は、米海軍インテリジェンス関係写真資料群によるレポート資料です。
こちらは、現在、宮城県(資料には福島県になっている。)の松島基地の飛行場となっていますが、当時は、日本海軍の松島海軍航空隊矢本飛行場でした。(参照:松島基地:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E5%B3%B6%E5%9F%BA%E5%9C%B0 )
Photographic Intelligence Report No.687. Matsushima Airfield, Fukushima, Honshu, Jun 26, 1945. NIPI #105221 RG 289. National Archives at College Park, MD
下の写真は、大阪府にあった陸軍佐野飛行場です。現在は、飛行場の跡地に公園や市民総合体育館が作られているそうです。(参照:泉佐野市立図書館https://library.city.izumisano.lg.jp/izumisano/nandemo/sa/sanohikoujou.html )
Photographic Intelligence Report No.705. Sano Airfield, Osaka Area, Honshu, Japan. Jun 21, 1945. NIPI #105153 RG 289. National Archives at College Park, MD
空中写真のフォルダーには、地図資料もありました。下の写真は、横浜市鶴見区近辺の地図です。
Port of Yokohama, Office of the chief of Naval Operations, Division of Naval Intelligence Navy Department, Washington, D.C. NIPI #105009 RG 289 May, 1945. National Archives at College Park, MD
さらに下の写真は、岡山県にある中国発電所(上)と三菱重工業の航空機製作所(左)を撮影したモザイク写真となります。
Photographic Intelligence Report No.148. Okayama Area, Japan. Dec 18, 1944. NIPI #103216 RG 289. National Archives at College Park, MD. (Above): industrial Plant and Chugoku Power plant. (Left): Mitsubishi Aircraft Plant and Airfield.
最後に、旧日本軍が撮影していた空中写真ネガフィルムを紹介します。この資料の下には日本語で『石田部隊-ホルランディヤ東部バワ山附近・昭和19.1.13・(テ)石田大尉・(ソ)湯地中尉』と記載されています。場所は、インドネシア東部のニューギニア島にある現在のジャヤプラにあたる地区でした。
RG373 Can# ON024732. National Archives at College Park, MD
米国国立公文書館の空中写真資料はとても奥が深くこれらの資料のスキャンのみを専門とするリサーチャーもいます。こうした空中写真資料はとても貴重であると思いました。(T.I.)