今回は、ここ最近私が見た米国国立公文書館の資料の中で面白いと感じた日本の資料をご紹介したいと思います。
(左)主婦之友六月号付録 (右)主婦之友十一月号付録Records of the Military Government of the Territory of Hawaii, Alien Processing Center(Entry A1 33); Records of United States Army Forces in the Middle Pacific, Record Group 494; National Archives at College Park, College Park, MD.
これらの画像は主婦之友、昭和13年(1938年)の6月号と11月号の付録の表紙です。主婦の友は1917年に創刊され、今もなお主婦向けの雑誌として発刊されています。主婦の友が歌詞を公募し、その懸賞に当選した歌が載っています。6月号では「婦人愛國の歌-すめらみくにの‐」と「婦人愛國の歌-抱いた坊やの」、11月号では「少年少女愛國の歌」と「ぼくらのへいたいさん」のそれぞれ2曲が選ばれています。婦人愛國の歌の歌詞を読んでみると妻として母として戦時中の理想的な女性の姿が描かれているような気がします。楽譜もついており、国民的作曲家であった古関裕而が「婦人愛國の歌-抱いた坊やの」の作曲を手掛け、「赤とんぼ」の歌で知られる山田耕筰が「少年少女愛國の歌」を作曲しています。
主婦之友十月号特別付録Records of the Military Government of the Territory of Hawaii, Alien Processing Center(Entry A1 33); Records of United States Army Forces in the Middle Pacific, Record Group 494; National Archives at College Park, College Park, MD.
上2枚の画像は同じく昭和13年の主婦の友の付録です。陸軍省新聞班が特別に作成をした地図で、昭和13年8月13日までの日本軍の動きも記入されています。地図の裏側にはその地図の見方、兵語や武漢攻略戦の主要地名など読者にわかりやすく解説がされています。主婦の雑誌内容で真っ先に思いつくのは生活の知恵やアイデア記事だったので、こうした地図が付録であったことはとても意外でした。しかし、よくよく地図を見ると陸海軍当局からの希望と武漢攻略戦の重要性を考慮して付録としたことが書かれてあります。そして、武漢攻略戦が進むとラジオでの戦況報告はこの地図によって説明されることになっていたそうです。昭和13年と言えば国家総動員法が発令された年で、その前年に起きた盧溝橋事件で日中戦争が泥沼化してきています。日本が第2次世界大戦に参戦するのはまだ先のことですが、すでに日中戦争もあり、国全体が戦争色濃くなっているのを感じさせます。
東京朝日新聞昭和六年十月十五日Records of the Military Government of the Territory of Hawaii, Alien Processing Center(Entry A1 33); Records of United States Army Forces in the Middle Pacific, Record Group 494; National Archives at College Park, College Park, MD.
この画像は昭和6年(1931年)10月15日の東京朝日新聞で、白木屋百貨店日本橋店の広告が掲載されています。この新館の設備を見てみると、7階に市松舗装の遊歩廊と噴水池、屋上には動物園があることが書かれてあります。また、美容室、理容室、歯科室、パーラー、郵便局、ツーリストビューロー、住宅相談所、婚礼相談所などのサービスも充実しています。エレベーターは12台、大エレベータは3台もあり、1階と3階にはエスカレーターがあったようで、今から80年以上も前のデパートの設備がこんなに整っていることに驚きました。ちなみにこの時には5階催事場で徳川時代大婚儀調度品の特別展覧会が開催されていました。この翌年、日本橋店で火災が起こりましたが、これは日本で初めての高層建築物の火災であったそうです。白木屋日本橋店は、1967年に東急百貨店日本橋店となり、その後1999年に閉店してしまいました。
日本語の新聞や広告などを資料の中から見つけると、ついつい見入ってしまいます。こういった印刷物からも当時の出来事だけではなく、流行や風潮、また普通の人々の生活の様子がわかりとても興味深いです。(NM)