戦後の静岡

資料調査をしていた時、一冊のアルバム資料が目に留まりました。それは、私の故郷に近い静岡県の写真資料でした。子供の頃から身近な存在として見て育った壮大な富士山、馴染みのある地名や風景がとても懐かしく感じました。今回は、そんな地元の写真資料の幾つかをご紹介しながら当時を振り返ってみたいと思います。

 

このアルバムは、戦後間もない1945年から1946年にGHQ下のC.I.C. (Counter Intelligence Corps) Area No.21 Shizuokaで民間情報部静岡支隊に所属していた一人のアメリカ軍人と日系アメリカ軍人によって撮影されています。地図や静岡県に住む人々の生活の様子や富士山を含む地元の風景写真があり、当時の様子を垣間見ることが出来ます。

 

下の地図はアルバムと一緒に保存されていた静岡市街の地図です。駿府城周辺に構えたC.I.C.の事務所や静岡県庁など主要箇所が記入されています。

 

RG 200(S) CIC Records of the National Archives Gift Collection  Album/Prints: Pictorial and Historical Record of CIC Area 21, Shizuoka, Japan 1945-1946 Box 1: National Archives at College Park, College Park, MD

静岡県と言えば富士山を思い浮かべる方も多いことでしょう。言うまでもなく富士山は静岡県と山梨県を跨る国内最高峰の名山ですね。2013年にはユネスコの世界文化遺産にも登録されています。その優美な風貌も下の写真の様に残されています。

 

RG 200(S) CIC Records of the National Archives Gift Collection  Album/Prints: Pictorial and Historical Record of CIC Area 21, Shizuoka, Japan 1945-1946 Box 1: National Archives at College Park, College Park, MD

 


RG 200(S) CIC Records of the National Archives Gift Collection  Album/Prints: Pictorial and Historical Record of CIC Area 21, Shizuoka, Japan 1945-1946 Box 3(Left)  Box2(Right) : National Archives at College Park, College Park, MD

 

左上の写真は静岡浅間神社が麓にある賤機山(しずはたやま)から見た富士山でしょうか。田畑が多く、のどかな風景が広がる奥に雪を頂いた富士山が見えます。右上の写真は、静岡警察署の屋上から東北方面に見た写真です。温暖な静岡の気候がカリフォルニアの様だとの印象が書かれています。

 

こちらは、東海道です。

 


RG 200(S) CIC Records of the National Archives Gift Collection  Album/Prints: Pictorial and Historical Record of CIC Area 21, Shizuoka, Japan 1945-1946 Box 2: National Archives at College Park, College Park, MD

 

写真には英語表示で東海道国道一号線と書かれています。その傍らで子供が赤ちゃんを背負って微笑んでいる姿はとても印象的です。また、下の写真では当時の様子について、歩行者、自転車、ワゴン車、カート、木炭自動車など無限の流れが常に東海道を上下している様だと表現しており、忙しく混雑した様子が伺えます。

 

下の写真は、茶摘みをしている様子です。

 


RG 200(S) CIC Records of the National Archives Gift Collection  Album/Prints: Pictorial and Historical Record of CIC Area 21, Shizuoka, Japan 1945-1946 Box 2: National Archives at College Park, College Park, MD

 

静岡県は緑茶の産地として知られています。その良質な茶葉は明治時代から海外(特にアメリカ)への輸出も盛んに行われていたとされていますが、戦中は茶畑を崩して食料となるさつま芋などを作ったり、製茶工場も軍需工場へと姿を変え1945年6月の静岡大空爆でそのほとんどが破壊されたとしています。

 

海水から塩作り作業もしていました。

 


RG 200(S) CIC Records of the National Archives Gift Collection  Album/Prints: Pictorial and Historical Record of CIC Area 21, Shizuoka, Japan 1945-1946 Box 3: National Archives at College Park, College Park, MD

 

海岸線に面している久能海岸では、戦後、政府からの配給もなく、闇市でも高価な塩を海面から海水をくみ取り、砂浜で作っていました。桶なども手作りで大変な作業だったことでしょう。

 


RG 200(S) CIC Records of the National Archives Gift Collection  Album/Prints: Pictorial and Historical Record of CIC Area 21, Shizuoka, Japan 1945-1946 Box 3: National Archives at College Park, College Park, MD

 

上の写真は、熱海の桜(左)お花見を楽しんでいる様子と焼津のお祭り(右)です。この年から、たくさんのお祭りが再開されました。

この様に、ここ米国国立公文書館には日本各地の写真資料が保管されています。今回は静岡を取り上げましたが、今後、他の地域の情報も取り上げてみたいと思います。(TI)