アスベスト

数ヶ月前、“在日米軍基地で働いていた日本人従業員のアスベスト被害”という記事を読みました。

日本人従業員がアスベスト被爆の危険性がある環境にも関わらず、不十分な防護対策のまま作業をしていたとの証言があるということや、とても残念なことなのですが、肺がん、中皮腫、または石綿肺という病気で亡くなられている方もいるという内容でした。

 

私はこれまでアスベストについての知識はほとんどありませんでした。ビルの建設などの際に保温断熱の目的で石綿を吹き付けるといった作業、そのような石綿を扱う作業や石綿工場に勤めている人、石綿を使用している建築物などで生活をしている人達が、将来的に病気を発症するといった健康被害にあう可能性が高く、現在は使用を原則禁止されているということ(一部を除く)を知りました。

 

米国国立公文書館のデーターベースで“アスベスト”というキーワードで検索をかけてみました。ヒットはないものの、日本の各地域の地理や自然または文化などを調査した記録資料の中に“Asbestos Resources of Japan”という戦後1948年10月に作成された資料を見つけました。

 

 

“Folder No.10 #115 Asbestos/SCAP; Natural Resources Section; Administration Division; General Subject File1945-51 General Records of the Department of State, Record Group 331; National Archives at College Park, College Park, MD.”  (Entry UD1817, Box 8909)

 

 

この資料には日本でのアスベストに関する全ての情報が載っており、例えば「主なアスベスト鉱山の名前や場所」「日本でのアスベストの歴史や始まり」「カナダからのアスベストの年間別輸入量(1926年以降)」や「アスベストの国内生産」など約30ページにわたりまとめられています。しかし、この資料が作成された当初は世界的にアスベストの危険性が全く問題視されていませんでしたのでそのような記述は有りませんでした。ただ一箇所“Problems of Asbestos Industry”(アスベスト産業の問題)と題された箇所に「アスベスト産業は労働問題によって妨げられている」と記載されており、不十分な居住施設や安定しない雇用状況のために有力な人材はアスベスト産業には集まらないと言った雇用問題についての記述であり、北海道のアスベスト鉱山で働いている人達の多くがその鉱山付近に住む近所の農民であるということでした。

 

(クリソタイルアスベストの年間生産率表-鉱山別)※画像中央部

 

ほかにも左の資料のように説明と同時に年次別で色々な事柄を表にしています。

 

“Folder No.10 #115 Asbestos/SCAP; Natural Resources Section; Administration Division; General Subject File1945-51 General Records of the Department of State, Record Group 331; National Archives at College Park, College Park, (Entry UD1817, Box 8909)

 

 

他にも色々な情報がありましたが、それらの中でも私が一番衝撃をうけた資料がこれから紹介する下記の1枚です。

 

"Folder No.10 #115 Asbestos/SCAP; Natural Resources Section; Administration Division; General Subject File1945-51 General Records of the Department of State, Record Group 331; National Archives at College Park, College Park, MD.”  (Entry UD1817, Box 8909)

 

他にも色々な情報がありましたが、それらの中でも私が一番衝撃をうけた資料がこれから紹介する下記の1枚です。

この資料の上部分には国産品アスベストを何に使用しているかということが記載されています。セメント、耐火性塗料や煙突などとさまざまな物に使われているのですが、“Others”と項目付けられている箇所に「ガスマスクのフィルター」とありました。

もちろんビルの建設や塗料などのように頻繁に使われるものではないとは思うのですが、過去にガスマスクのフィルター部分にアスベストが使用されていたという事実があった事を証明している資料だということになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

(wikipediaより/ガスマスクの付け方を市民に指導する警察官(1938年(昭和13年)東京)*写真と本文の関連性は一切ありません。

 

ガスマスクは本来毒ガスなどの有害物質から身を守るための用具なのですが、そのフィルターにアスベストが使われているということは、とても危険なような気がします。上の写真は本文とは一切関連性はないのですが、この写真では一般市民の小さな子供までガスマスクの装備の仕方を警察官から指導してもらっていますが、もしもこのガスマスクのフィルターにアスベストを使っていたとしたら・・・

 

かつてアスベストはその性質と安価で「奇跡の鉱物」として多種多様に使用されていましたが、近年ではアスベスト健康被害が問題視されています。アスベストを使用した建物がない事やアスベストが原則禁止になっている事で終わりということではありません。今現在アスベスト除去作業というものは世界各地で頻繁に行われていますし、その作業によって新たな被害が生じることもあるかもしれません。大気中にアスベストが飛散する可能性だってゼロではないと思います。アスベストは目に見えないものです。私たち個人で少しでもアスベストを身近に感じ、学んでいく事も大切と思います。私自身アスベストという物質や歴史背景をよく知らなかったのでこれらの資料はとても勉強になりました。今後も機会があればまた違った視点からアスベストの事を調査してみたいと思います。(M.J)